更年期に現れる「胸の痛み」はなぜ発症するのか?その理由と症状の詳細、対処&予防法とは

更年期に現れる「胸の痛み」

早い方では30代後半から、一般的には40代中ごろ~50代前半までのいわゆる閉経前後5年~10年という特定の時期を迎えた多くの女性が実感する疾患の1つに、「更年期障害」が挙げられます。

この更年期障害を発症する特定の年代のころをさし更年期と呼びますが、実はこの更年期に差し掛かった方特有の症状は意外と多く、完全でない知識からこれらの症状を更年期が大きな原因の1つと考えず、安易な判断や治療に任せてしまうケースが後を絶ちません。

中でも、更年期特有の症状となっているのが「胸の痛み」。

実際に更年期と呼ばれる年代を経験した方の中にも、特別な何かを患ったわけでもないのに急に胸に違和感や強い痛みを感じた経験をお持ちの方が多い様子。

なぜ、更年期特有の症状としてこのような胸の違和感や痛みを発症するのでしょうか?その原因には、実は私たちの身体の中に存在する血管と血流が関係していました。

今回は、更年期特有の症状の1つ「胸の痛み」に対し、なぜこの症状が現れるのか?の原因を初め、症状の詳細や具体的な対象法について詳しく解説していきます。

更年期特有の胸の痛みとは

冒頭にご紹介した通り、更年期と呼ばれる閉経の前後5年を中心とした時期に差し掛かった女性の方を中心に、身体の内外に様々な症状を発症しやすくなります。

そして、この症状をすべて総称した呼び方として更年期障害というものが挙げられます。

更年期障害特有の症状としては、女性ホルモンのバランスが乱れることによって現れる諸症状が代表的ですが、こういった女性ホルモンに由来した症状以外の隠れた症状も、実は多く存在している事をご存じの方は意外と少ない様子。

中でも、更年期を迎えた方の多くが比較的実感しやすい症状の1つとしてあげられるのが、胸を中心とした胸部に感じる違和感や痛み。

実は、これ、更年期を迎えた女性だからこそ発症する症状であり、その理由もまた、女性特有の体質や身体の変化に由来しているのです。

更年期で変化する女性の体質

更年期は、いわば子供を作るために様々な準備や変化を迎えた女性の身体に対し、安定した体質を保つ為への変化を迎える時期のこと。

ですから、更年期とは主に出産に欠かせない月経が終了となる閉経を境とした時期を指しています。

更年期を迎えるということは、子供を作る上で欠かせなかった要素を徐々に変化させていく事を意味し、特に女性の身体の中では大小様々な変化が現れています。

中でも、血圧の低下による主要な血管や毛細血管の縮小は顕著で、この血管の縮小に由来して様々な症状を発症する女性の方が急増するほど。

そして、その血管縮小に関連した諸症状の1つに挙げられるのが、今回ご紹介している「胸の痛み」なのです。

胸の痛みの原因「微小血管狭心症」

更年期を迎えた女性の身体の中では、身体中に巡るほぼすべての血管が更年期前よりもより狭く細く作り替えられます。

血液の通り道である血管が細く狭くなると言う事は、そこを通る血液の循環自体が滞りやすく、また血圧も高くなりがちに。

ここから、特に元々から血圧が高めの方や血管が必要以上に細くなってしまった方を中心に現れるのが、胸の痛みであり、更年期特有の血管に由来する胸の痛みのことを「微小血管狭心症」といいます。

微小血管狭心症とは、毛細血管など極小の血管が更に狭まり細くなることによって血流が停滞し、それが原因となってけいれんや痛みなどを発症する症状のことで、これが更年期特有の胸の痛みの主原因なのです。

10人に1人がかかる微小血管狭心症とは

更年期特有の胸の痛みの原因である微小血管狭心症は、更年期を迎えた女性の10人のうち1人、要するに10%の確率で発症するポピュラーな症状の1つ。

ただ、これを実際に更年期を迎える直前の方や現在更年期中の方が素人判断で診断するのは、やや難しい要素が存在しています。

では、微小血管狭心症が疑われる場合、どのような症状が身体に表れるのでしょうか?その点について詳しく知ることで、より正しくこの症状への対応を行う事ができます。

微小血管狭心症の主な症状

微小血管狭心症が疑われる場合に現れる代表的な症状については次の通り。

  • 安静にしていても胸に痛みを感じる
  • 30分~1日など細い痛みが長く続く
  • 不定期で吐き気・胃痛・息切れや動悸などの症状を感じる
  • 背中やのど、アゴや耳の後部に痛みを感じる

更年期前後の方でこれらのいずれかの症状が単一で或いは複数実感できるようであれば、まず微小血管狭心症を疑うのが早道。

実は、更年期を前後にして現れる微小血管狭心症は、通常の狭心症よりも医師による診断が行われなかったりスルーされる傾向が依然として強く、病院を適切に利用している方の中にも診断されないまま症状を抱えている方が少なくありません。

症状を感じたら必ず担当医に相談を

上述したように、通常の血管に対して現れる狭心症という症状と比べ、更年期が原因となって現れる微小血管狭心症はその診断基準が非常に曖昧な事から医師による診断も困難で、実際にその症状を確認するためには精密な検査が欠かせません。

結果、微小血管狭心症を発症しているにもかかわらず適切な診断が行われず、治療が開始されていないという患者の方も。

上述したような鈍く弱い痛みが数時間から1日中に渡って長期間感じられるようであれば微小血管狭心症の疑いが濃いので、遠慮せずかかりつけの担当医にこの症状では?と必ず相談してみてることをおすすめします。

微小血管狭心症の対処・予防

更年期を迎えた女性の10人に1人という高い割合で発症する代表的な症状でもある微小血管狭心症は、胸の痛みや違和感を初めとした様々な症状を身体にもたらし、それが症状のシグナルとなります。

では、実際にこの症状を発症した場合、どのような対処を行う必要があるのでしょうか?

また、まだ更年期を迎えながらもこの症状が感じられない方やこれから更年期に差し掛かる方にとって、症状を予防する方法はあるのでしょうか?

それぞれについて詳しくチェックしていきましょう。

微小血管狭心症の対処法

更年期由来の微小血管狭心症と診断された場合に適用される主な対処法としては、血流を改善する治療薬や交感神経自体に作用する遮断薬を使った治療が代表的。

通常、狭心症の治療の際に用いられるニトログリセリン(硝酸薬)は微小血管狭心症にも有効で、これを使用することで狭まった毛細血管自体を拡張し血流を穏やかにする効果をもたらします。

また、症状自体が喫緊の状態ではない場合には、心筋の血流を司る交感神経に作用する交感神経遮断薬を用いた治療も有効で、これを服用する事で交感神経を穏やかにし、血流の需要自体を抑える効果が得られます。

いずれの場合も、内服薬を使った治療だけで行えるので、特別な手術などは必要ありません。

胸の痛みに対する予防法

では、次に症状の発症前に有効な予防法についてチェックしてみましょう。

通常、微小血管狭心症が発症する理由としては、毛細血管内壁にある「血管内皮」と呼ばれる組織が何らかの理由で損傷することによって血管が狭まり起こる事が判明しています。

このことから、血管内皮を損傷する原因となる飲酒や喫煙由来の高血圧症状、脂肪過多による脂肪異常症や糖尿病、メタボリック症候群などの症状を防ぐことで、自然に微小血管狭心症の予防効果が得られます。

食事を菜食中心としたり、適度な運動と睡眠を摂り、飲酒や喫煙は最小限に抑える、ストレスはできるだけため込まないなどの方法がいずれも有効です。

また、女性ホルモンと似た性質を持つイソフラボンなどを食事から定期的に摂取することでも更年期由来の女性ホルモンの乱れ自体を抑え、症状の発症を抑えられます。

誰にでも起こりうる症状だからこその対策を

閉経を迎えそれを過ぎた前後5年~10年の時期をさす更年期は、特に女性の方にとって非常に不安を感じやすいタイミング。

もちろん、更年期障害は多くの女性の方が必ず通るハードルの1つであり、全く症状を実感しないという方は決して多くありません。

更年期特有の症状は数多くありますが、その中でも比較的多くの女性が実感しやすい症状の1つとして、今回ご紹介した胸に感じる痛みが挙げられます。

この痛みの原因となる微小血管狭心症は、適切な治療を早期に実践することでその症状自体をほぼ抑える事ができるので、速やかな対応が欠かせません。

更年期を間近に控えた方から既に更年期を迎えている方の中で少しでも胸に違和感や軽い痛みを継続的に感じるようであれば、この症状を疑ってみることをまずはオススメします。

その上で、担当医への相談など迅速な対応を行えば、決してこの症状は怖い存在ではないのです。

今回ご紹介した情報を元に、安心して適切な症状への対策を心がけてみてください。