更年期に起きる「寒気・悪寒」の原因について|どんな対策が有効?

更年期に起きる「寒気・悪寒」の原因について|どんな対策が有効?

50歳からおおよそ前後5年から10年を境とした期間を更年期と言いますが、この更年期に多くの方が実感しやすい症状の1つに悪寒や寒気といったものがあります。

なぜ、更年期特有の症状としてこのような悪寒や寒気などを発症するのか?そこには、更年期障害特有の原因がありました。

その意外な原因や効果的な対策法について詳しくご紹介しましょう。

これをしっかりと覚えておけば、いざ更年期を迎えた際にも健康な状態をキープすることができるかもしれません。

更年期に起きる「寒気・悪寒」の原因について

更年期に起きる「寒気・悪寒」の原因について

閉経を迎え始める50代前半を中心にその前後5年~10年という特定の時期を総称して更年期と呼び、この更年期にはこの時期特有の様々な症状を発症する方が多く、それらの症状を総称して更年期障害といいます。

そして、この更年期障害の中に含まれる症状の1つで実に多くの方が実感しやすいのが、今回ご紹介する悪寒や寒気。

なぜ、これらの症状が更年期を中心に多くの方の身に起こるのか?その原因と更年期との因果関係について詳しくチェックしていきましょう。

主原因は更年期障害による女性ホルモンバランスの低下と乱れ

特に女性の方に多く観られる症状である更年期障害は、その原因の1つとして卵巣機能の低下があります。

卵巣とは言わずと知れた出産に欠かせない卵子を製造する組織であるとともに、実はもう1つ重要な役割を担っています。それが、女性ホルモンの生成です。

女性ホルモンとは、女性が女性らしい身体をつくり維持するために欠かせない体内物質のことで、この女性ホルモンが一定の分量に保たれている間は身体が健康な状態を維持できる一方で、加齢や卵巣機能自体の低下によって女性ホルモンの生成自体が低くなり、結果として体内における女性ホルモンのバランス自体が乱れてしまうのです。

中でも、女性ホルモンの一種である「エストロゲン」は、身体の体温調整を担っている神経組織「自律神経」の働きを促進する効果があり、このエストロゲンの生成が著しく低下することによって体温が変化し、これが発端となって最終的に悪寒や寒気といった症状へと繋がります。

そして、更年期はまさにこの卵巣機能が低下するタイミングであり、結果としてこの時期を迎えた多くの方に悪寒や寒気が観られるようになるのです。

また、この卵巣機能の低下による女性ホルモンの減少によって引き起こされる悪寒や寒気は、更年期だけでなくそれよりも更に5年~10年ほど早いいわゆるプレ更年期と呼ばれる閉経していない若い世代の女性にも徐々に広がりを見せており、原因に対しては更年期を迎える前の段階からの早急な対策が欠かせません。

ホットフラッシュの反動

更年期を迎えた事による卵巣機能の低下によって女性ホルモンの1つ「エストロゲン」の生成が低下し、結果としてエストロゲンが担う自律神経の働きが低下し悪寒や寒さといった諸症状が引き起こされることを説明しましたが、実はエストロゲンの低下と悪寒・寒気といった症状は直接的な因果関係を有していません。

そして、ここで重要となってくるのが、エストロゲン低下による自律神経によって観られる主な症状である「ホットフラッシュ」というもの。

ホットフラッシュとは、体温を調整する自律神経が乱れることで引き起こされるほてりや体温上昇による発汗のこと。

たとえば、ホットフラッシュによって運動をしたわけでも内のに身体が温かくなり発汗したとします。

その後、体温は一時的に戻るのですが、発汗によって発生した汗はそのまま気化熱作用によって蒸発し、このときに体温が急激に低下するのです。

これが、更年期障害によって観られる悪寒や寒気であり、その間には必ずこのホットフラッシュという症状が因果関係として存在しています。

通常の発汗とその汗によって行われる気化熱が原因となり体温が急激に減少する作用については、汗をかかないよう努めたりかいた汗を速やかに拭き取るなどの対策を行うことで防げますが、更年期特有のホットフラッシュは不定期かつ頻繁に発生する症状であることから、通常の方法ではなかなか抑えることができない点も、個人での対策が功を奏さない大きな要因といえます。

寒気や悪寒にはどんな対策が有効?

寒気や悪寒にはどんな対策が有効?

更年期と呼ばれるタイミングはもちろんのこと、最近ではプレ更年期と呼ばれる新たなタイミングにも観られるようになった悪寒や寒さといった諸症状。

なぜこれらの症状がこのタイミングを狙ったかのように観られるようになるのか?

その原因について詳しく解説しましたが、次にこれらの原因をしっかりと把握した上で寒気や悪寒を防ぎ、或いは現れた症状を抑える対策としてどのような方法を実践すべきか?

多くの方が簡単に実践できる方法を中心に詳しくチェックしていきましょう。

食事による栄養素の補充

おそらく、更年期に由来する悪寒や寒気といった諸症状に対する最も簡単な方法と言えるのがこちら。

私たちは、健康な身体を維持すべく、日々食事を通じて様々な栄養を摂取しています。

そして、この更年期による悪寒や寒気の元々の原因となっている女性ホルモン「エストロゲン」の不足に対しても、食事による栄養素の補充が大変有効です。

最近の研究結果などにより、特に大豆類に含まれる「大豆イソフラボン」という栄養素は、優れた抗酸化作用を持つとともに、体内に入ると女性ホルモンと非常に似通った働きを行うことがわかっています。

ですから、女性ホルモンの低下に対し大豆イソフラボンを効果的に補うことで、不足分の働きをこれに任せられ、自律神経を常に穏やかに保つことができます。

ただし、食事によるイソフラボンの補充を行う際には、無理なダイエットや、冷たい物を取り過ぎるなど体温を急激に低下させるような行動は慎んでください。

これらの行動はいずれも、せっかく吸収したイソフラボンの働きを阻害したり体内にある女性ホルモンの働き自体を妨害してしまうのでご注意を。

漢方薬の活用

東洋医学に基づいた医薬品が活用される以前から用いられてきた医薬品として長い歴史を有する漢方薬。

この漢方薬もまた、更年期障害特有のホットフラッシュやそこに付随する悪寒や寒気といった症状を緩和・予防する働きを持つ対策として有効です。

例えば、市販されている漢方薬の中でも「加味逍遙散(かみしょうようさん)」という漢方薬には、のぼせや発汗といったホットフラッシュ自体を抑える効果が含まれており、これを常用することでホットフラッシュを抑えるとともにそこから派生することによって悪寒や寒気を元から遮断できます。

特に、この加味逍遙散は血流を改善・促進することによってのぼせや発汗自体を抑える効果が期待できるので、更年期障害特有のむくみや冷え性といった症状に対しても有効な対策法として併せてオススメします。

大豆イソフラボンを活用した食事療法よりも更に迅速な効果の発現が期待できる上、この漢方薬自体はドラッグストアなどの店舗で直接購入できるので、病院での治療などがちょっと不安という方にも最適。

医療機関への受診と治療

これまで、更年期障害による諸症状に対しては、医療機関では具体的な治療法はあまり適用されませんでした。

このため、更年期障害を実感しつつも具体的な治療を行うことができず苦しんだ経験があるという方も少なくありません。

ところが、最近では最新の医療技術が開発されたことによって、医療機関でも適切な更年期障害への治療を受けることができるようになっています。

その治療法の1つがHormone Replacement Therapy(HRT)と呼ばれるもので、これは更年期障害によって衰えた卵巣機能が原因となりおこるエストロゲンの低下を外部から補う方法のこと。

具体的な方法としてエストロゲンを含んだ医薬品を使った投薬治療を継続して行い、卵巣機能の低下が起こってもそれに付随する諸症状を抑えます。

大豆イソフラボンと似通った方法ながらもこちらは体内で生成されるエストロゲンと全く同様の成分を直接投与するため、より効果的かつ迅速に治療効果を発現させることができます。

このHRTという治療法は、日本国内だけでなく既に先進国を中心に世界中で活用されている代表的な治療法となっており、婦人科など専門外来で保険適用の形で受診できます。