更年期障害の病院での検査・治療法について

更年期障害の病院での検査・治療法について

体温調節機能の異常や頭痛・肩こりなどさまざまな症状を呈する更年期障害は、50歳前後の女性を悩ませる厄介な症候群です。

他の病気との区別がつきにくい症状も見られるため診断が難しい面もありますが、現在では更年期障害の発症メカニズムも医学的に解明されています。

治療法も確立しているため症状に合わせた対処が可能で、医療機関を受診してきちんとした治療を受ければ生活の質が大幅に向上するのは間違いありません。

この記事では、更年期特有の症状に悩んでいる40代から50代の女性を想定し、婦人科を受診した場合の検査方法と主な治療方法を紹介します。

病院に行ったらいいのかどうか迷っている人でも、検査と治療についての予備知識があれば受診しやすくなるものです。

更年期障害かどうかを調べる検査方法

更年期障害かどうかを調べる検査方法

病院で本格的な治療を受けるに当たっては、その症状が本当に更年期障害を原因として生じているのかどうかを間違いなく診断する必要があります。

女性の更年期障害は女性ホルモンのエストロゲン分泌が急激に減少することが主な原因です。

その結果、ホルモンバランスが崩れて自律神経に狂いが生じ、ホットフラッシュに代表される一連の症状となって表れてきます。

エストロゲンの分泌量が減っているかどうかは血液検査で調べることもできますが、その前にまず症状や月経の状況、さらには子宮・卵巣などの病歴と家族歴などについて問診を行うのが一般的です。

更年期の症状についていくつかの簡単な質問に答える評価表も、日本産婦人科学会によって考案されています。

女性ホルモンの血中濃度を調べる検査

問診やチェックシートだけで更年期障害と確定できればいいのですが、薬を使った治療に問題がないかどうかを判断するため、問診の結果を受けての血液検査や身体に関する検査も欠かせません。

中でも、更年期障害を診断するのに最も決定的なデータを提供するのが血液検査です。

3種類あるエストロゲンの中でもエストラジオールの血液濃度は、更年期の診断において特に重要視されています。

エストラジオールの数値は月経周期によって大きく変動し、卵胞期の前期にも減少する傾向が見られます。

さらに、黄体形成ホルモンや卵胞刺激ホルモンの血液濃度も合わせて調べることにより、受診者が閉経期にあるのかどうかが正確に判断できるようになるのです。

血液検査以外の検査方法

以上のような血液検査以外にも血圧測定や心電図検査など一般的な検査が行われる場合もありますが、後述するホルモン補充療法を行うには必要に応じて事前に子宮や卵巣・乳房に問題がないかどうかが検査されます。

内診だけでなく超音波検査でも子宮や卵巣の状態が調べられ、細胞診を通じて子宮がんの有無が調べられるのです。

乳がんの患者では、更年期障害のホルモン補充療法とは逆にエストロゲンを抑えるホルモン療法が行われる場合があるほど、がんの進行にエストロゲンが大きく関わっている症例が見られます。

そのため、ホルモン補充療法を開始するに先立っては乳がんの有無を調べる目的で、触診やマンモグラフィー・超音波検査等も欠かせません。

更年期障害の主な治療方法

更年期障害の主な治療方法

更年期の症状が疑われる場合は、以上のような検査の他にも骨量測定や心理テストなどが行われる場合もありますが、それらの結果を総合して更年期障害と診断されたら症状と検査結果に応じた治療方法が選択されます。

治療方法は更年期障害の根本療法と対処療法に大きく分けられ、情緒不安定やうつ・イライラ・不眠などの症状が強く表れている患者には精神面のケアも必要です。

女性の更年期障害は閉経期に伴ってエストロゲンが急激に減少していることが最大の元凶ですので、多くのケースでは低下した女性ホルモンを補充してホルモンバランスを整える治療法が選択されます。

対処療法として処方されているのは、漢方薬や自律神経調整薬といった薬です。

最も効果が高いホルモン補充療法

HRTとも呼ばれるホルモン補充療法は医療機関で更年期障害を治す際の中心となる治療法で、症状を改善させる効果は最も高いと言われています。

症状そのものを軽減させる目的で行われる対処療法と異なり、ホルモン補充療法は症状の原因そのものに直接働きかけるのです。

更年期障害の症状は女性ホルモンの急激な低下で自律神経が混乱しているために生じ、この状態に体が慣れれば症状が収まっていきます。

減少している女性ホルモンを薬で補充してホルモン低下を和らげ、乱れていた自律神経を正常に戻すことがホルモン補充療法の目的です。

薬には錠剤型の経口剤と貼付型や塗布型の経皮吸収型製剤があって、胃腸の調子が悪い人は後者が選択されます。

HRT(ホルモン補充療法)については下記で詳しく説明していますので、是非ご覧になってください。

HRT(ホルモン補充療法)とは?>>

漢方薬や向精神薬・抗うつ薬が処方されることも

更年期障害の症状の表れ方もその人によって個人差が大きく、中には日常生活に大きな支障をきたすほど症状が重く出る人もいます。

ホルモン補充療法を始めてから実際に効果が出るまである程度の日数がかかる場合も少なくないことから、そのような人には対処療法も必要です。

顔のほてりやのぼせ・肩こり・頭痛・冷えといった更年期特有の症状は、いずれも血流を調節する自律神経の乱れが原因と考えられます。

そうした症状を改善させるには、西洋医学の薬よりも漢方薬の方が相性も良いものです。

更年期障害の原因は女性ホルモンの減少だけでなく社会的要因も考えられるため、精神的な症状が強い人には抗うつ薬や抗不安薬が処方される場合もあります。

ホルモン補充療法の副作用について

ホルモン補充療法の副作用について

ホルモン補充療法は更年期障害の症状を抑える効果が最も高い一方で、薬を使う治療法だけにある程度の副作用も予想されます。

クリニックなどを受診する上で多くの人が不安材料として挙げているのも、そうした副作用の問題です。

特に女性ホルモンを補充する治療法には以前から「乳がんのリスクが高まる」と言われてきたため、更年期の症状に悩みながら病院での治療には二の足を踏んでいるという人も少なくありません。

乳がんや子宮がんなど女性特有の病気は、発症に女性ホルモンが深く関わっているとも言われています。

実際に、全体の6割から7割ほどを占めるホルモン感受性乳がんでは、エストロゲンががん細胞の増殖を促すとされているのです。

乳がんの発症リスクは否定

以上のような事実が明らかになったからこそ、婦人科や更年期外来では事前に検査で乳がんの有無をしっかりとチェックするようになったとも言えます。

検査の結果、乳がんの疑いありと診断された場合はホルモン補充療法を避け、乳がんの治療を優先させなければなりません。

検査で乳がんの恐れがないと判明した人でも、通常のホルモン補充療法では乳がんの発症リスクが高まる可能性については否定されています。

日本人を対象とした症例対照研究ではHRTによる乳癌発症リスクはRR:0.432(95%CI:0.352—0.530)と少なくともリスクの増加を認めてはいない。
また,日本人を対象としたコホート研究でもリスクの増加は認められなかった。

出典:乳癌診療ガイドライン | 日本乳癌学会 乳癌診療ガイドライン

エストロゲンを単独で投与する方法は子宮がんのリスクが高まるため、他の病気等で子宮を摘出した人にのみ適用される治療法です。

それ以外の人はエストロゲンに加えて黄体ホルモンも補充することにより、子宮がんの発症リスクを抑えられます。

不正出血などの副作用は調節可能

エストロゲンを単独で投与した場合と比べ、エストロゲンと黄体ホルモンの両方を使ったホルモン補充療法を長期にわたって実施した場合には、乳がんの発症リスクがわずかながら上昇します。

しかし、その程度は無視できるくらいに小さいので、治療によって更年期の症状が改善されるメリットの方がずっと大きいものです。

ホルモン補充療法にはこの他にも不正出血やおりもの、乳房・下腹部の張りといった副作用が生じる場合もあります。

中には治療中に吐き気を訴える人もいますが、そうした副作用は薬の量や投与方法を調節することで改善が可能です。

投与方法にも周期的投与や連続投与の他、休薬期間を設ける逐次投与など様々な種類があるのです。